top of page
検索

信頼の欠如がもたらす非効率

  • 執筆者の写真: Masayuki MASUDA
    Masayuki MASUDA
  • 7 日前
  • 読了時間: 2分

山岸俊男著『安心社会から信頼社会へ: 日本型システムの行方』を読んだ。 本書になかで,近年注目されている人的資本という言葉が出てくる。この言葉が,広く知られるようになったのは,ノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカー(Gary Becker)の著書『人的資本(Human Capital)』である。これは,教育・訓練・健康への投資が,労働者の生産性と所得にどのように影響するかを示したものである。


著者は,この人的資本の獲得を促進したり,あるいは人間関係や経済関係を効率的にするために必要なのが「社会資本」であるという。本書のなかでは,道路や下水道などの公共施設を意味する社会資本との混同を避けるために「関係資本」としている。


関係資本の重要さを示すために,孟子の母親が行った話を取り上げている。孟子の母親は,墓地や市場の近くに住んでいると子どもの孟子がまわりの環境からよくない影響を受けることに気づいて,学校の近くに引っ越して孟子が学問の道に進むための環境を整えた。


この環境にあたるのが「関係資本」で,子ども時代に恵まれた環境に育った人,つまり多くの関係資本を持っていた人は,成長する過程で大きな人的資本を身につけることができ,そうでない人は身につけることができなくなると著者はいう。


現実はそうでないパターンもたくさんあるだろう。が,子どものために特定の地域に引越したり,評判いい学校を受験させる家庭も一定程度あり,この関係資本づくりに力をいれている証だろう。


本書のタイトルにある「信頼」は,関係資本のひとつであるとして,この欠如がいかに大きな非効率を生み出しているかについて説明している。


興味のある方はぜひ読んでみてほしい。



 
 
 

Comments


bottom of page