前野ウルド浩太郎著「バッタを倒しにアフリカへ」は,好きなことで生きる研究者の奮闘をおもしろおかしく書いている。
実情は笑話にできるような状況ではなかったと思う。研究者は,研究機関に所属するからこそ生活の不安なく,好きな研究に没頭できる。しかし,所属先もない状態で,好きなことで生きるのは簡単ではない。こういう研究者がたくさんいるだろう。
本書は結果として,25万部の大ヒット作となって,前野先生は大きな成功を収めたからよかった。さらに,研究機関への就職も決まったことが続編でわかっている。
本書は,学術書というよりも,真面目なユーモアのある研究者が書いた旅行記といった感じで楽しい。
前野先生のフィールドとなったこのモーリタニアという国は,パリ・ダカールラリーのコースになっていた記憶くらいしかなかったのだが,公用語がフランス語で,イスラム教の国で,日本の援助も結構あるとか,まったく知らなかった。
前野先生は慣れない土地で苦労するのだが,バッタ研究の現場でワクワクしている様子が伝わってきて,こちらまで嬉しくなってきた。
砂漠で繰り広げられる現象をみながら,次々に論文の種を見出していく前野博士に本物の学者の姿をみた。
このような研究者の奮闘本が,たくさんの方々に読まれるようになって非常に嬉しい。誰でもエッセイが書けるわけではないが,好きな研究をして生きるための方策として,本を出すという道が一般化してほしいと思う。
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