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  • 執筆者の写真Masayuki MASUDA

「わかりやすさ」に注意

本書のおかげで、世の中で圧倒的に支持される「わかりやすさ」にたいして、徹底的に嫌われる「抽象概念」の重要性を少しは理解できたと思う。


著者は、世の中は、わかりやすい商品が売れ、会社でもわかりやすいことをやっている人が優勢になり、選挙でも大抵「わかりやすい人」が勝つという。


しかし、人間の知性のほとんどは抽象化によって成立しているにもかかわらず、「わかりやすさの時代」にあって、抽象化が退化する危険性があると警鐘を鳴らしている。

かつて大学院の先生が、「数字と言葉を使いこなせるようになれ」と言っていた。


本書でも言葉や数を操れることが人間の知能の基本中の基本だとしており、先生の言葉を思い出した。


言葉と数字を生み出すのに必要なのが、「複数のものをまとめて、一つのものとして扱う」という「抽象化」で、言い換えれば、抽象化を利用して人間を編み出したものの代表例が「数」と「言葉」になるそうだ。


複数のものをまとめる事例として、鮪も鮭も鰹も鯵も、まとめて「魚」と呼ぶことで、「魚」を食べようという表現が可能になる。また、リンゴ三個も犬三匹も本三冊も、「まとめて同じ」と考えることから「三」という数が成立している。


著者は、「抽象化なくして生きられない」が「抽象化だけでは生きられない」ので、セットで考えるように主張している。


本書を読んで、わたしたちが子どのころから学んできた国語と数学(算数)も要するに抽象化を学んでいることがわかった。


著者は、具体レベルだけで数学をとらえれば「直接なんの役にも立たない」ように見えるが、抽象レベルで見れば数学の「考え方」はどんな職業の人にも毎日必ず役に立っているとしている。


大学の一般教養なども、たとえば、哲学や古典を学んで実践的ではないのは明白だが、こうした抽象度の高い学びの内容をさまざまな形で「具体化」できるかどうかは、抽象概念をどれだけ理解して操れるかにかかっているという。


「わかりにくい」ものを簡単に排除しないようにしないようにしたい。そして抽象化が退化しないようにしよう。




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