ずいぶん前のネット記事になるが,作家の橘 玲さんが「若者は「ゼネラリスト」を求める企業を辞めるべき、これだけの理由」というのを書かれていて,とても参考になった。
この専門性について興味深い本を読んだ。 国分 峰樹著「替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方」である。
著者は,株式会社電通で働きながら博士(経営学)を取得して大学の非常勤講師を務めたり,さらに東京大学の博士後期課程で大学論を研究するビジネスパーソンである。
著者は,かつては専門性がたいしてなかったとしても,ゼネラリストとして会社人生を全うできたかも知れないが,そうした時代もいよいよ終わりに近づいているという。ビジネスパーソンも,専門性を身につけて「従業員」から「プロフェッショナル」になる必要があるとしている。
しかし,専門性を身につけるのは難しい。そのヒントは「研究」にあるという。研究とは,先人たちが築いてくれた知の上に立って,新たな知を生み出すことである。つまり,知識をインプットするだけでなく,そのあとにアウトプットできるようになることなので,「勉強」ではなく「研究」が役に立つというのが本書の主張である。
僕自身も深く同意する。一方で,ビジネスパーソンが「研究」に取り組む難しさも理解する。研究には時間もお金かかる。しかも,多くの人が嫌いな「勉強」のイメージがある。いくら「勉強と研究は違う」といっても,研究をしたことのない人にはわかりにくい。しかも,研究に取り組んだとして,それがどのくらい大きなリターンになるのかわからない。
しかし,ドイツでは大手企業の経営者の45%が博士号を取得しており,アメリカでは大
企業の役員・管理職の62%が修士号を取得している(日本経済新聞,2021/8/3,朝刊)。修士号でいえば,日本はわずか6%でアメリカの10分の一程度である。
著者は,専門性を身につける「型」を習得することが,環境変化の激しいビジネスの世界で強力な武器になるのだが,これを「理解しているか理解していないかの差」だという。決して修士号や博士号を取得すればいいというわけではないという。
日本は,とりわけ事務系総合職について専門性を重視しないゼネラリスト採用・養成を続けてきた。著者のいう「型」を持たないゼネラリスト集団が,「型」を持つ諸外国の専門家集団にどのように対抗していけるのか,勝負の分かれ目にきているかも知れない。
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