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  • 執筆者の写真Masayuki MASUDA

誠実なことを語る人間に損をさせてはいけない

文句なしに本書は面白かった。


どのような点がよかったのかというと,3つの側面があったように思う。


1.ビジネス書としての面白さ

世界一のトヨタが,なぜ中国進出で大変な困難の数々に遭遇し,またそれらをどのようにして克服して現在の中国における地位を獲得したのかがわかった。


2.中国で辛酸を舐め続けた主人公とその人物を見事に使いこなした社長たちの存在

トヨタの中国進出にもっとも大きな貢献をしたのは,トヨタでは異質中の異質の人物だった。普通なら組織から排除されかねない個性を持っていたが,歴代社長たちは見事にその個性と能力を使いこなして,中国市場におけるもっとも困難な仕事をなしとげた。


3.中国の政治闘争の歴史

大躍進運動や文化大革命という言葉は知っていた。しかし,これらが苛烈な政治闘争とどのように関係していたのかはわからなかった。政治闘争の結果,政治家のトップや重鎮たちが政治闘争に敗れて,民衆の前で吊し上げられ,暴行を受け,場合によっては命も失い,名誉,家族,財などを奪われるというリアルストーリーに背筋が凍った。


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最後に,非業の死を遂げた元国家主席 劉少奇の言葉を本書から引用して紹介したい。現代の経営にも十分な示唆を与えてくれるものである。


虚にまみれた大躍進運動の総括として,劉少奇が述べた言葉:


「我々,指導者たちは,誠実なことを語る人間に損をさせてはいけない。ウソを語り,ウソの報告をした人間は批判され,必要なら処分しなければならない。」


現代でも,都合の悪い事実を隠蔽し,都合のよい報告を上げて,組織的な不正を行って問題になる企業などがある。


劉少奇は,大躍進運動の誤りの原因の内,天災などの自然災害は3割で,人災が7割であるとして,毛沢東を批判した。


すなわち,国家のトップが不都合な現実を見ずに,自分にとって都合のよいものだけを欲したときに,国家に極めて大きなダメージを与えるということである。

事実,大躍進運動では,数千万人が飢餓で亡くなった。


「国家」という言葉を「組織」に置き換えていただくといいだろう。経営者たちは,誠実なことを語る従業員に損をさせてはいけないのである。




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